福井のソウルフード「あべかわ餅」とは? 地元民に愛される老舗の餅屋など福井市内で購入できるお店をガイド! つきたてを食べられる餅つき体験も紹介します。
黒蜜を絡めた餅に、きな粉をたっぷりまぶして食べる「あべかわ餅」。添加物や保存料を使わず作られる自然な甘さがご当地名物ですが、日持ちしないことから県外ではあまり知られていない隠れた一品です。福井市内であべかわ餅を買える老舗餅屋や福井駅周辺の店、さらに餅つき体験ができるスポットを紹介します。
福井人のソウルフードあべかわ餅とは?
福井には根強い餅文化が存在していて、餅屋と和菓子屋が分かれて商いをしている珍しい地域です。餅は、節句や長寿祝い、地域の祭りなど、生活の中のおめでたいシーンに必ず登場します。
そんな福井県北部の嶺北地方で愛されているのがあべかわ餅です。福井のあべかわ餅は、朝についた餅に黒蜜ときな粉をたっぷりとかけるスタイル。素朴で自然な甘さが、口の中いっぱいに広がります。
また、ミネラル豊富な黒砂糖と栄養価の高いきな粉は、夏の滋養にもぴったり。夏の暑気払いと厄払いに食べられる「土用餅」としては、金沢や京都の「あんころ餅」が有名ですが、福井ではあべかわ餅が一般的。お気に入りの店のあべかわ餅を食べて育った人も多く、心に刻まれたソウルフードといっても過言ではないでしょう。
150年以上愛され続けるあべかわ餅の歴史
静岡県には、一口サイズの餅にきな粉と白砂糖をまぶした江戸時代からの名物「安倍川もち」があります。それをルーツにした福井のあべかわ餅は、名前は同じでも似て非なるもの。
江戸時代後期に創業した「大吉餅」(福井市松本)の9代目店主・森眞一郎さんによると、静岡から福井に伝わった時期や理由は「明確には分かっていない」そう。参勤交代や旅人を通じて福井に伝わり、「夏場でも傷みにくい黒蜜が使われるようになったのでは」とのこと。
また、創業以来あべかわ餅を作る老舗「蝋金餅店」(福井市左内町)では1867年の文献資料に店の記録が残っていることから、福井でも江戸時代から食べられているといえそうです。
Column
松平春嶽の随筆に登場
幕末の福井藩主、松平春嶽の随筆「眞雪草紙」にもあべかわ餅についての記述があります。「かつて松平忠昌公のころ、毎月1日、15日に本丸であべかわ餅を下げ渡す習慣があった」「その例が残り、代々の初入国の時には8月1日にあべかわ餅を下げ渡していた」「後に倹約令が出されてその習慣がなくなった」などと記されています。
“店がけ”と“自分がけ”、あべかわ餅の2つの食べ方
多くの店では、注文を受けてから黒蜜ときな粉をたっぷりつけてくれます。きな粉の上からも、さらに黒蜜をかけてくれますよ。
- 大吉餅店主 森 眞一郎さん
- 店で黒蜜ときな粉をつけたものは味がなじみ、昔ながらの懐かしい味になります。添加物や保存料を使っていないので、当日中に食べていただくのが一番おいしく召し上がれますよ。
すぐに食べないときや手土産にするときは、黒蜜ときな粉を別添えした“自分がけ”できるものがおすすめ。食べる直前に味をつける方が、餅のやわらかさを味わえます。とろとろの黒蜜に餅を絡め、ふかふかのきな粉をまぶして完成。シーンに合わせて、食べ方を選んでみてください。
福井駅近郊であべかわ餅が買える老舗餅店&スーパー5軒
福井駅から車で10分以内のエリアで、あべかわ餅を通年で買える老舗餅屋をピックアップ。どの店も味わいが違うので、食べ比べてみるのもおすすめです。
- 大吉餅
- 蝋金餅店
- 餅の田中屋
- 甘福
- FOODLAB MINIE BASE
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大吉餅
江戸時代後期(1820年以前)創業の老舗餅店。水を多めに二度づきした餅は驚くほどやわらか。沖縄県多良間島産黒糖の自然な甘さを活かしつつ、少しだけ入れた塩気が絶妙な隠し味。香り高いきな粉とコク深い黒蜜をまとった餅が口の中でとろけます。餅米ときな粉は、それぞれ福井県産のものを使用しています。
“店がけ”を注文すると、目の前で手際よく黒蜜ときな粉をつけてくれます。黒蜜ときな粉を“自分がけ”できる別添えのあべかわ餅は手土産にも。店内には、各種大福やちぎりだんごなど、その日の朝についた餅が並びます。
(餅のかたち)三角
店がけ:
(食 感)
ふわふわ――――|――★―しっとり
別添え:
(食 感)
ふわふわ―★――|――――しっとり
(きなこ)
すっきり――★―|――――甘い
(黒 蜜)
さっぱり――★―|――――濃厚
蝋金餅店(ろうきんもちてん)
1867年以前から営む老舗で、福井では珍しくあべかわ餅のみを作る餅店。代々受け継がれた製法で作られる「あべ川」は、早いときには午前中で売り切れるほど人気です。
注文してから、目の前で黒蜜ときな粉をつけてくれます。土間の畳の間に腰かけて待つもよし、おかみさんの手際の良さに見とれながら待つもよし。こっくりと甘い黒蜜と香ばしいきな粉がバランスがよく、一口サイズでいくらでも食べられます。食べているうちに黒蜜ときな粉がしっとりと馴染み、からだにしみ入る味わいを堪能できます。
(餅のかたち)小ぶりな三角
(食感)
ふわふわ――――|――★―しっとり
(きなこ)
すっきり――★―|――――甘い
(黒 蜜)
さっぱり――――|――★―濃厚
基本情報
餅の田中屋
創業1861年の老舗餅屋。黒蜜ときな粉が別添えされていて、食べる直前に自分の好みでかけて味わえます。杵と臼でついたときの食感を再現すべく試行錯誤した餅は、しっかりコシがありつつ、のびやか。それでいて、口の中に入れると出来立てのようななめらかさです。
沖縄県波照間島産の黒蜜は糖度70で濃厚。少し火を入れた香ばしいきな粉と薄く平たい餅によく絡み、しっかりしたコクと甘さが口の中に広がります。ほかにも、店では多種多様な甘味や琥珀糖、アイスキャンディーなど地元で愛される銘菓を多数販売しています。
(餅のかたち)薄く平らな丸
(食感)
ふわふわ――――|――★―しっとり
(きなこ)
すっきり―――★|――――甘い
(黒 蜜)
さっぱり――――|―――★濃厚
甘福(かんぷく)
よもぎ餅を使った珍しいあべかわ餅。きな粉は粗目に挽いて口どけを良くし、よもぎ餅の風味を引き立てるために砂糖を加えた甘い味わい。逆に沖縄産の黒蜜は、あっさりとした風味で仕上げています。黒蜜がよく絡んだ香り高いよもぎ餅を、たっぷりのきな粉の中から発掘するのも楽しみ。
余ったきな粉はご飯やトーストにかけたり、ヨーグルトに混ぜるのも通な食べ方。赤飯やよもぎ大福にもファンが多いそう。
(餅のかたち)楕円
(食感)
ふわふわ――――|――★―しっとり
(きなこ)
すっきり――――|―――★甘い
(黒 蜜)
さっぱり―★――|――――濃厚
基本情報
MINIE ローカルフードマーケット
福井駅前から徒歩ですぐのところにある複合施設「MINIE」。1階の「ローカルマーケット」では、2種類のあべかわ餅を取り扱っています。甘めの餅に、黒蜜ときな粉がしっとり絡んだものと、自分の好みでかけられるものが選べます。どちらも翌日まで日持ちするので、旅行の手土産にもおすすめです。
福井市の餅店「餅の木村屋」から毎日入荷していますが、売り切れることもあるのでご注意ください。
(餅のかたち)丸
(食 感)
ふわふわ――――|――★―しっとり
別添え:
(食 感)
ふわふわ―――★|――――しっとり
(きなこ)
すっきり―★――|――――甘い
(黒 蜜)
さっぱり―★――|――――濃厚
つきたてが絶品! あべかわ餅を食べられる餅つき体験
福井駅から車で15分。のどかな自然に囲まれた古民家カフェ「福井ふるさと茶屋 杵と臼」では、毎週土曜日午前中に餅つき&餅の食べ放題体験を行っています。昔懐かしい雰囲気の中で、つきたての餅をお腹いっぱい味わいましょう。
店内には、せいろで蒸したもち米のふくよかな香りが漂います。体験では、スタッフが事前に「小突き」して粒がほどよく無くなったもち米を、木の杵と臼を使って実際についていきます。小さい子どもでも持てるように、杵は大小のサイズを用意。隣にいる臼取(うすどり)の掛け声に合わせて、一人数回ずつリズムよく餅をついていきます。
つき上がった餅は、店の人が小分けにして丸め、味付けをしてテーブルに運んでくれます。ほかほかの餅は驚くほどふわふわで、やさしい甘さの黒蜜とたっぷりのきな粉と一緒に頬張れば、香りと甘さが口の中でとろけるよう。つきたての温かい餅で作ったあべかわ餅は、ここでしか食べられない絶品!
ほかに、福井では一般的な大根おろしをのせたおろし餅、醤油に浸し海苔を巻いた磯部餅、福井式の味噌の雑煮が味わえ、つきたて餅がなくなるまでおかわり自由です。
まとめ
あべかわ餅の歴史や食べられるお店についてご紹介しました。静岡県は「安倍川もち」、福井県では「あべかわ餅」と、同じ名前でも漢字とひらがなが使われる場所が違っていたり、一般的な姿も違う面白いグルメです。
おいしい餅のパラダイス、福井。長い歴史の中で地元の食文化に根付いた餅屋が作るあべかわ餅は、驚きのおいしさです。現地でしか食べられないソウルフードを、ぜひ味わってみてくださいね。
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福井の名物・ご当地グルメ
福井の魅力は、「食」。ふくいの「食」は一度食べたら忘れられないホンモノの美味しさです。
豊かな自然環境に恵まれ、四季がはっきりとした福井は、四季折々の魚、肉、米、酒を楽しむことができる食のまちです。
福井に来たときには、是非食べて欲しい定番、おすすめの福井グルメをご紹介します。