名勝 養浩館庭園の魅力を徹底解説!アクセス/駐車場情報もあります
福井駅から歩いて15分ほどの所にある、自然と調和した美しい水の庭・養浩館庭園。かつて福井藩主松平家の別邸だった数寄屋造りの屋敷をそなえる回遊式林泉庭園です。
江戸時代につくられた庭園で、大きな池を中心に広がる庭と、池に浮かぶようにして建ちあらゆる角度から美しい景色を楽しめる数寄屋造りの建物は「御泉水屋敷」と呼ばれていました。その優美さは米国の専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」による日本庭園ランキングでも上位に選ばれるほど。
養浩館庭園といえば秋の紅葉の季節が有名ですが、建造物・池だけでなく玉砂利・石組・樹木にも風趣が凝らしてあるので、秋だけではなく全ての季節で四季折々の花や風景を楽しむことができますよ。
1.名勝 養浩館庭園の歴史
「養浩館庭園」(ようこうかんていえん)は1600年代前半江戸時代初期に完成し、1600年後半に改修された越前国福井藩主・越前松平家の別邸です。
昭和20年の福井空襲による建物の焼失後も、庭園の池や築山、石組等の最重要部分は失われず、昭和57年には「良く旧態を残した優秀な庭園である」として国の名勝に指定されています。文政6年の「御泉水指図」という平面図を基本に復元整備が進められ、約8年の歳月をかけ平成5年に完成し公開されました。
養浩館という名は「人に元来そなわる活力の源となる気」転じて「大らかな心持ち」を育てることを意味する孟子の言葉「浩然の気を養う」が由来で、明治17年に松平春嶽によって付けられました。
2.屋敷
櫛形ノ御間(くしがたのおま)
門をくぐり御台所を抜け、最初に入る部屋は、池に面している櫛形ノ御間(くしがたのおま)。屋敷の中で最も池に張り出している部屋なので、庭園と池が見渡せます。水を近くに感じられて、まるで屋形船にでも乗っているかのような開放感がありますよ。
令和であることを忘れ、まるで江戸時代に来たかのような気持ちになります。
美しく立派な鯉たちは人懐っこく、窓から顔を出すと寄ってきてくれます。
受付でエサを販売しているのでぜひあげてみてくださいね。
※お子様がエサをあげる場合、身を乗り出さないようにご配慮ください。
御座ノ間(ござのま)
屋敷の中心となる部屋で、藩主の座が設けられることから御座ノ間(ござのま)の名がつけられています。東に床と脇棚、南には出書院が設けられています。桑の一枚板を透彫にした欄間は、子供の健やかな成長を願う麻の葉の模様です。
清らかな風を感じる、そこは「詫び」の世界です。
細い組子の明障子を開けると明るい陽射しが注ぎ込まれ、庭園を彩る木々や色とりどりの飛石が見えます。この飛石には福井県内で採れた安島石が使用されています。薄い層による水紋のような模様が特徴です。
加工していない石の色や形から、自然の豊かさが伝わりますね。
御月見ノ間(おつきみのま)
館内一番の見所である離れ座敷、御月見ノ間(おつきみのま)。この部屋の随所に凝らされた自然美の追及、おもてなしの心は他に類を見ません。
ここからは北の床以外のすべての面から、それぞれの庭の景色を楽しむことができます。どこに座ろうか、藩主はこの景色を見て何を感じたのか…。そんな風に思いを馳せながら、変わらぬ自然の美しさをじっくり眺めたくなります。
雲窓からの眺め
雲窓の前に藩主が座り、池や月を愛でていたそうです。悠久の時を経て自分も藩主と同じ景色を見ているのかと思うと感慨深いものがありますね。月見台からは昇る月を、この窓からは池に映る残月を見つめ、月と共に更けていく夜を楽しんでいたのでしょうね。
この屋敷の景色は藩主が座って眺める目線で作られていますから、みなさんもまずは座ってからこの景色を眺めてみてくださいね。
昔はここに毛氈(もうせん)を敷き、客人を招いてお月見をしていたそうです。
客人が目線を移しても楽しめるようにと、地袋の模様を左右で変え、袋戸には貝細工をほどこし、あえて趣が違うように設計されています。
見る人が心ゆくまで楽しめるように…これぞおもてなしの極意ですね。
鎖ノ御間(くさりのおま)
廊下境となる板戸に描かれている鶏。何故、鶏なのかわかりますか?
この部屋は東向き。最初に日の光があたるので朝一番に鳴く鶏が描かれている、という訳です。
ユーモアがありますよね。
御廊下(おろうか)
屋敷入口から右側は生活の場として建てられました。ここから先は柱の太さや造りを変え建てられています。
もてなしの場と生活の場をしっかりと分けていたのですね。
御湯殿(おゆどの)
くつろぎを主とした別邸ならではの構成と言えるのがこの蒸風呂。
総ヒノキ造りで、ちょうどここから「清廉」の正面が見え、その奥には福井城の本丸が見えたそうです。
池や城を眺めながらの入浴、まさに優雅ですね。
御茶屋建物の屋根は約10万枚のスギの杮(こけら)が使われた杮葺(こけらぶき)。2年に渡り葺き替えを行ったそうです。葺き替えした1年の差がこんな色合いになるんですね。空の青とのコントラストが見事です。
屋根の上の重しになっている大棟石は福井でしか採れない笏谷石(しゃくだにいし)製。雨に塗れると薄い青に見えるのが特徴です。
3.庭園
養浩館の魅力は建物ととけあう庭です。建物と庭、双方が最大限にその良さを活かし引き出し、他にはない美しさと斬新さが生み出されています。
5つある石橋を渡り、時代を超える芸術性を体感してきました。
自然石の石橋
まずは一番大きな橋からです。石の橋はだんだん小さくなっていきます。
細長い巨石をそのまま据えていて、橋の下を水がしみ込むように流れ、他の庭園ではみられない趣向になっています。
どこからともなく聞こえてくる鳥のさえずり、風の音、心地よい空気の流れに心が洗われます。
笏谷石製の蹲踞(つくばい)
進んでいくと苔が見事な蹲踞(つくばい)が見えてきます。
午前中はここから水が湧き出ていますよ。
ここからみる屋敷も撮影スポットです!
臼ノ御茶屋跡(うすのおちゃやあと)
ここにはもうひとつお茶を飲む席として臼ノ御茶屋という建物があったそうです。
道路に出てしまうため復元はできませんでしたが、礎石で表面的に復元表示をしてあります。
小亭「清廉」(せいれん)
清廉と名付けられたケヤキ造りの小亭です。
天井は網代(あじろ)張り、床は正方形の板を斜めに敷いた四半敷きとなっています。
今は中には入れませんが、当時はここで藩主が一服されていたそうです。
少し歩いた後の清涼感、さぞかし気持ちよかったでしょうね。
築山
この築山の苔も見事です。長い年月をかけ育てられた和の風情を感じます。
庭園の魅力を最も感じるのはやはりこの水の造形でしょう。豊かな水は、訪れる人々の心を明るく和ませています。
正方形に近い形で敷地一杯に大きくとられており、日本庭園では珍しく中島がありません。
大きくのびやかな水面にうつる月や空の様子を楽しんでいたのでしょうね。
池の汀を岬や入江で入り組ませる変化に富んだ景色になっていて、歩くたびに発見がある庭園です。
この達磨型の景石からみる屋敷が一番の絶景ポイントと言われています。
全てが調和するこの優美な景観を今に楽しめるなんて幸せの一言に尽きますね。
受け継がれてきた福井の歴史と自然美がここにはあります。
今回は運よく、ボランティアガイドの藤岡さんとご一緒することができました。
自分だけは決して気付けない細かい細工や由来、歴史を教えていただけて養浩館をより身近に感じましたし、福井の素晴らしさをまたひとつ知ることができました。
ありがとうございました。
《ガイドについてはこちら》
ライトアップイベント
今回は初夏の養浩館庭園をご紹介しましたが、他の季節にもそれぞれの味わいと見所があり、何度訪れても新たな発見や感動がありますよ。
中でもお勧めはライトアップです。光に照らされた幻想的な空間をお楽しみください。
※開催時期などはHPでご確認ください。
まとめ
福井の歴史に触れ、自然ととけこむことができる養浩館。
街中からほど近い場所なのに、このおだやかな静寂。
屋敷前にこれだけの大きな池があるという空間構成は、他に類を見ない貴重な庭園です。
日本独自の美を追求し、水と緑の魅力を味わいきる養浩館で、ここでしか感じられない穏やかなひとときをお過ごしください。
基本情報
名勝 養浩館庭園
<住所>〒910-0004 福井県福井市宝永3-11-36
<アクセス情報>JR福井駅から徒歩15分
北陸自動車道福井ICから車で20分
<電話番号>0776-20-5367(福井市文化振興課)
0776-21-0489(福井市立郷土歴史博物館)
<開園時間>9:00~19:00 (入園は閉園時間の30分前まで)
※11/6~2月末日は17:00で閉園
<休日>年末年始(12月28日〜翌年1月4日)
<利用料金>大人:220円(団体160円)
郷土歴史博物館との共通観覧券:350円(団体260円)
70歳以上の方、中学生以下の方、身体障害者手帳、療育手帳、
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方とその介護者の方:無料
<駐車場の情報>有り(福井市郷土歴史博物館の駐車場をご利用ください)
大型バス6台(要事前連絡)